整形外科学U

 

○発育性股関節形成不全 p613

周産期及び出生後の発育過程で大腿骨頭が関節包の中で脱臼している状態をいう。この疾患概念には出生前・後の股関節脱臼はもちろん、亜脱臼や将来脱臼をきたす可能性を有する臼蓋形成不全を含めた脱臼準備状態にある股関節がすべて含まれる

徴候:開排制限、大腿皮膚溝の非対称、オルトラーニテスト、バーローテスト、アリス徴候、寛骨臼の空虚

・伸縮徴候、大転子高位・突出

 

Perthes(ペルテス)病 p621

発育期に大腿骨近位端骨折部が阻血性壊死をきたす疾患である。壊死は最終的にほぼ完全に修復されるが、その修復過程で壊死に続発する大腿骨頭の陥没変形、扁平巨大化および骨端成長軟骨板の成長障害による頸部短縮および横径増大などの変化が生じる。47歳の骨端核は外側骨端動脈のみで栄養されており、この動脈の閉塞が壊死発生の原因と考えられているが、この栄養血管がなぜ閉塞するのかはいまだ解明されていない。

疫学:発症は312歳頃であるが、頻度が高いのは67

   男児に多く、2万人に1人の発症率。多くは片側性

症状:初発症状は股関節痛が多いが、大腿からの膝関節の痛みを訴えることがある。大腿部、臀部の筋委縮がみられる。関節可動域では開排・内旋が著しく障害され、屈曲拘縮も認められる。

   Trendelenburg徴候は陽性で、鼡径部に圧痛がある。

head at risc sign(catterall)

1,Gage sign  2,骨端外側の石灰化 3,骨頭の亜脱臼 4,骨端線の水平化 5,骨幹端部嚢腫

Perthes病の診断がついた際、その治療および予後に関連して重要なことは、患者の年齢・壊死の病期・壊死

の局在・範囲・head at riscの存在とその数である。

治療:治療の原則…壊死部が新生骨に置換され修復が完了するまでの間の力学的強度が低下する時期に、いかにして骨頭に圧潰を生じさせることなく将来の骨頭変形による二次性股関節症の発生を防止できるかにある。また小児であるため治癒期間の短縮も重要な問題となってくる。

保存療法…保存療法の原則は免荷療法と各種装具を用いて股関節を外転・内旋し、骨頭を寛骨臼内で遠心位に保

     ち、骨頭の球形を保持して修復を待つことである。拘縮が強い場合には牽引を行う。

手術療法…大腿骨内反骨切り術が最も一般的である。壊死範囲の広い例ではキアリ骨盤骨切り術や大腿骨頭回転

骨切り術も行われる。

 

○大腿骨頭すべり症 p626

思春期の成長が盛んな時期に大腿骨近位端線で骨端が頸部に対して後下方に滑る疾患である。

男性に多い(女性の2.5倍)。骨端が後方へ滑ると患肢が外旋し、正面X線像でみるとすべった骨端が内方に転位しているように見えるが、これは見かけ上の所見である。

成因:思春期の男児に多く発症し、二次性徴の発達が遅れていることが多いこと、両側性があること、肥満児が多いこと、女性では初経後には発生しないことから、成因として成長ホルモン・性ホルモンや副腎皮質ホルモンなどの関与が考えられる。

診断:Trethowan(トレソーワン)徴候…本徴候は初期のすべりの診断に有用である

   Capener(ケイプナー)徴候…すべり症の患者では骨端核は後下方へ変位しているため、骨端核後方部分が寛骨臼の外にはみ出している。

合併症:大腿骨頭壊死・軟骨溶解・変形性膝関節症

○単純性股関節炎 p629

小児の股関節痛の夫も多い原因疾患である。通常12週間程度の経過観察あるいは安静にて治癒する。

疫学:ほとんどが310歳児(平均67)の男児に好発。両側同時発症や多関節発症例はない

症状:主症状は股関節であり、大腿の前・内側から膝にかけての痛みを訴えることが多い。患肢は外転・外旋位を取とり、患肢が見かけ上で長く見える。血液所見などの検査所見は通常正常値を示す

診断:単純X線検査で骨の異常はない。関節液の貯留により関節包陰影が上・外側に膨隆する。

      Perthes病の初期とは鑑別がつかないことが多いため、23か月X線学的経過観察が必要である。

治療:安静により24週間で著明に改善する。

 

○内側側副靱帯損傷(MCL) p678 

MCL損傷は膝の靱帯損傷の中で最も頻度が高く、膝に大きな外反力が加わって発症する。

ラグビーやスキーなどで受傷することが多い。損傷部位はMCLの大腿骨起始部付近が多く、同位部に圧痛を認め、膝を外反すると激痛を訴える。

検査:外反ストレステスト・内反ストレステスト

治療:単独損傷であれば外反不安定性は小さいので症状に応じて装具装着などによる保存療法を行う。46週間でスポーツ復帰が可能となり、予後は良好。

 

○前十字靭帯損傷(ACL) p679

スポーツ競技で飛び上がった後着地したとき、急に方向転換したときなど前十字靭帯は単独損傷しやすい。

半月板損傷は4060%に合併する。数時間以内に間接が著しく腫脹し、関節血症を認める。放置例では関節軟骨が傷つき、変形性膝関節症に発展する。

検査:Lachman(ラックマン)テスト・pivot-shift test(軸移動テスト)・前方引き出しテスト

治療:新鮮例で骨片の剥離を伴っている場合は強固な一次修復を行う。靱帯中央部の断裂は縫合が困難であり症例に応じて一次修復以外の治療法を選択する。自家腱や同種腱を用いた例では術後6ヵ月〜1年でスポーツ復帰が可能となる。

 

○後十字靭帯損傷(PCL) p682

バイク事故やスポーツ外傷などで膝から転落し、約90°屈曲位で前方から脛骨粗面部付近に直達外力を受けて受傷する場合が多い。乗用車の追突事故では膝屈曲位で膝下前方を打撲して受傷する(ダッシュボード損傷)。

診断:後方引き出しテスト・脛骨後方落ち込み徴候

治療:脛骨付近部での裂離骨片を伴う損傷や靱帯付近部での断裂は修復を行う。単独損傷におけるスポーツ復帰の予後は良好。

 

○半月板 p661

内側および外側の脛骨関節面の辺縁部を覆う線維軟骨で、辺縁が楔状に厚くなっており関節接触面の安定性を増大させ、荷重を分散・吸収する機能を持つ。通常、半環状で内側半月の方が外側半月よりも前後径が大きい。

伸展時には脛骨関節面上を前方へ、屈曲時には後方へ移動する。外側半月の移動量は内側半月より大きい。

 

 

 

 

 

○半月板損傷 p674

体重が負荷した状態で屈曲した膝関節に異常な回旋力が加わると、半月の一部が脛骨と大腿骨の間に挟まり損傷を受ける。

症状:受傷直後に半月の損傷側に一致した関節間隙に疼痛が生じる。損傷が半月辺縁まで及んでいる場合は関節血症を認める。辺縁部での銃断裂では断裂した半月が顆間窩に嵌頓し、膝が屈曲したまま伸展不能となることがある。このような断裂形態をバケツ柄状断裂と呼び、膝が嵌頓をきたす原因として最も頻度が高く重要である。

診断:マクマレーテスト・アプリーテスト

治療:原則として関節鏡視下の半月縫合を行う。水平断裂や横縦列に対しては部分切除を行う。

 

○末梢神経損傷 p483

橈骨神経:下垂手…手関節と指のMP関節の伸展が出来ず、手が下垂した状態となる。

正中神経:猿手…正中神経麻痺に特有の変形であり、母指球筋の委縮により猿の手に類似する。対立運動困難

尺骨神経:鉤爪指・鷲手…骨間筋および虫様筋が麻痺し、MP関節過伸展、PIP関節屈曲をきたしたもの。

 

○アキレス腱断裂 p724

好発年齢は3040歳代でスポーツによる外傷が多い。下腿三頭筋以外の足底筋の作用により足関節の自動底屈は可能であるが、つま先立ちはできない。断裂部の陥凹の触知や下腿三頭筋の把握テスト(トンプソンテスト)などを用いて診断する。

治療:ギプス固定や機能装具を用いて保存療法を行うこともあるが、活動性の高い例にはアキレス腱縫合術が行われる。

 

○解放骨折 p738

皮膚や軟部組織に創が存在し、骨折部と外界が直接交通するもの。感染の危険が高く、初期治療の段階で皮下骨折とは異なった注意を要する。解放骨折は軟部組織損傷の程度によって初期治療が異なるので、Gustilo(ガスティロ)分類を用いるのが一般的である。解放骨折を複雑骨折とも呼ぶが、粉砕骨折と混同しやすいので最近はあまり用いられない。

 

○一次骨癒合 p44

骨幹部骨折などを正確に整復し、強固な内固定や創外固定などを施した場合、仮骨を形成せず、接触した骨同士がハバース管による生理的骨改変により骨形成が生じ癒合が完成する現象である。

 

○二次骨癒合 p44

仮骨形成を伴う。瘢痕形成による修復ではなく、新しい軟骨・骨組織再生による修復であり、自己再生現象の1つと考えられる。

 

○小児の骨折 p756

小児は成人に比べて骨折の頻度が高い。骨膜は厚く骨形成が旺盛である、骨癒合が早い、診断上の特殊性がある、旺盛な自家強制能がある、成人と異なった合併症を起こす、成人と異なった治療法を要する、靱帯損傷・脱臼は稀である、出血に対する抵抗性が低いなどの特徴がある。

成長軟骨板損傷・若木骨折,急性塑性変形

 

 

○上腕肩甲リズム p438

上腕骨と肩甲骨は2:1の一定のリズムで動いている。

:上肢180°外転時には上腕骨が肩甲骨に対して120°外転し、肩甲骨が60°外転することで180°の外転が得られる。ただし、上腕外転30°までの外転初期には肩甲骨の動きは少ないといわれている。

 

○コンパートメント症候群 p114 754 772 870

 

○脊髄損傷 p842

合併症:慢性期の合併症は褥瘡と尿路感染症である

 

key musclekey sensory point

 

Key muscle

Key sensory point

上肢

C4

肩鎖関節

C5

肘関節屈曲

前肘窩外側

C6

手関節伸展

母指近位節背側

C7

肘関節伸展

中指中節の背側

C8

中指屈曲

小指中節の背側

T1

小指伸展

体幹

T4

乳頭高位

T10

臍高位

T12

鼡径靱帯中央

下肢

L2

股関節屈曲

大腿前面中央

L3

膝関節屈曲

大腿骨内果

L4

足関節背屈

足関節内果

L5

母指伸展

3中足骨背部

S1

足関節底屈

踵部外側

S2

膝窩部

S3

坐骨結節

S4-5

肛門近傍

○中心性脊髄損傷 p847

脊髄の灰白質と白質内側部の損傷。

運動麻痺は下肢よりも上肢に強い。

過伸展外力による損傷が多い。

下肢の麻痺は徐々に回復し、歩行不能だった例も歩行が可能となってくるが、手指の麻痺は回復不良であることが多い。

 

○RICE処置 p772

R:Rest 安静

I:Ice 冷却

C:compression 圧迫

E:elevation 挙上

 

○疲労骨折 p735

健常な骨に通常は骨折を起こさない程度の負荷が繰り返し加わった場合に生じる骨折である。スポーツによる疲労骨折は脛骨に多く、疾走型と跳躍型がある。中足骨に起こる疲労骨折は行軍骨折とも呼ぶ。

 

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